三重県の好きだった場所1
いまは奈良県の東吉野村に住んでいるけれど、その前は三重県の紀北町に6年ほど住んでいた。
いろいろなタイミングや事情があって引っ越ししたけれど、わたしは紀北町が大好きだった。
なので外に出て新しい場所に住むとしても、紀北町にすぐ帰れるくらいのところが良かった。
東吉野村から紀北町までは車で1時間半くらい。
まあまあ行き来しやすい場所に住居が見つかったと思う。
伊勢志摩から熊野まで続く紀伊半島のリアス式海岸。
入り組んだ海岸線が織りなす小さな浦々。
その浦の一つ一つに50〜100軒くらいの漁村が無数にあって、文化や話し言葉もそれぞれ少しずつ違う。
わたしはそんな小さな漁村のひとつに住んでいた。
お家の前にはすぐ海が広がっていて、小さな島がぽこぽこ浮かんでいるのが部屋から見えた。
堤防を歩いていると海女さんの海女笛が聞こえたりする。
春にはみかん畑の花が咲いて、あたり一帯がいい香りで包まれた。
とても可愛らしくて大好きな集落だった。
紀北町の海山という地区には銚子川という綺麗な川があった。
夏にここで泳ぐのも好きだったけれど、この川はあまりにも綺麗なためNHKの特番などで何度も全国的に紹介されて、夏は外から来る人でいっぱいになってしまった。
ちょっとうるさいし、なんだかマナーが悪い人も多くなる。
だけど夏が終わるとここには一転して誰も来なくなるのです。
地元の人すらあんまり来ない。
わたしはそんな人のいない時期に、銚子川の上流にある魚飛渓(うおとびけい)に行くのが好きだった。
よく晴れた日に「あ、今日行こう。」と思い立つ。
水筒に温かいコーヒーを入れて、ビスケットやチョコレートを用意する。
パン屋さんのあんぱんがあればとっても幸せ。
スープジャーにお味噌汁を入れて、おにぎりを持って行くこともあった。
アウトドア用のレジャーシートはいつも車に乗せてある。
ここいいな、と思ったところでいつでも車を停めて広げられるように。
それで何しに魚飛渓に行くかというと、ただ一人でぼーっとしに行くのです。
読みかけの本を持っていくこともあった。
とにかく誰も人がいないというのがいい。
こんなところで転落死したらしばらく見つけてもらえないだろうな、と思うほどに人がいない。
電波も届かないので、電話がかかってくることもない。
それで川の音や木の葉の揺れる音、鳥の声を聞きながらゴロゴロ過ごす。
日差しが移動していくから、それに合わせてわたしも移動する。
この時間がとっても好きだった。
紀北町やお隣の尾鷲市には、こういうお気に入りの場所がいくつもあって、秘密の宝物のような感じでずっと心に残っている。
山奥で発見した小さなダムなんかもあって、ひそかにmyダムと呼んだりしていた。
深いブルーの水がとっても綺麗なダムだった。
でもいま思うと人はいないけど、クマはいたかもしれませんよね💦
生きててよかったです。
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